└大型化粧品店の興隆

2006年12月18日

大型化粧品店の興隆Vol.5:店内環境ゆえのサービス力

前回までに、ミュゼ・ド・ポウの品揃えとVMD、更に立地と見てきましたが、もう一点の重要なポイントとしてサービスがあります。

まず広大な店内に並ぶほとんど全ての商品がオープンディスプレイになっており、テスターが設置されています。テスター自体はセルフ化粧品売場ではごく普通ですが、ミュゼ・ド・ポウの場合、スペースが広いので落ち着いて試用することができます。

化粧品業界また、店内に設置された本格的メイクアップスタジオにて、メイクアップアーティストが顧客のスキンケアやメークの相談に応じたり、また同じく店内に設置された大手制度品メーカーのカウンターでは、美容部員が肌状態のチェックやカウンセリングに応じたりしています。

これらは通常、専門店や百貨店で行われているようなレベルのサービスであり、利用者にとってそのようなサービスが近場のセルフ形式の大型店で受けられるのはうれしいところです。更にミュゼ・ド・ポウでは、広い敷地を活かし、店内にパックやマッサージが無料のフェイシャルエステブースやネイルサロンまで完備しています。

同社では、メイクアップスクールの在学生や卒業生をアルバイトで雇用しているようで、そういった人達に経験をつむ場を提供しているという点でもよいと思います。本シリーズではベンチマークとしてセフォラをあげていますが、セフォラでは店内に配置された店員が顧客の求めに応じてメイクの相談などに対応していました。

ミュゼ・ド・ポウのこれら上記のサービスは、立地上、または商品ライン的に同社と競合するGMSやドラッグストアと一線を画する差別化要素になっており、ロイヤルカスタマーの育成にも繋がっていると思います。ただ最近はその競合であるドラッグストアにも変化が見られます。

価格訴求一辺倒の値引き競争で顧客を獲得し化粧品販売チャネルとしての存在感を増してきたドラッグストアですが、自らも利益を確保できない状態に陥る中で、脱価格競争へシフトしつつあります。それには、値引き訴求が難しいNPP(ノープリントプライス)ブランド商品が増えてきていることも影響しています。そこで、価格以外の訴求ポイントとして注目しているのがカウンセリングです。今、大手DSはカウンセリングができる人材の配置に力を入れています。

化粧品業界マツモトキヨシは、ビューティー専門スタッフを各店に配置する施策を実施、更に同社の設けた試験をクリアした精鋭部隊であるビューティー専門のスーパーバイザーの配置も行っており、後者はすでに10人を越えているそうです。特にPB化粧品を展開する同社は、知名度の低いPB商品の推奨販売のためにもビューティー専門スタッフによる販売力強化は不可欠になっています。

またセイジョーは、元美容部員で即戦力となる専属のビューティーパート20〜25人を主力ビューティー特化型店に配属、更に高い専門知識を持ち、美容スタッフへの教育やビューティー特化型店の化粧品売場を統括するビューティーカウンセラー12人をすでに有しているとのことです。

女性らしい店内の雰囲気、そしてゆったりしたスペースでのカウンセリングという意味で、店内環境も含めたサービスとしては、ミュゼ・ド・ポウにまだ軍配があがります。ただしDS各社もカウンセリングに注力してきておりソフト面での競争が激しくなってきていると言えます。

参考文献:
・カメガヤホームページ
・週刊粧業


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2006年10月09日

大型化粧品店の興隆Vol.4:立地ゆえの競合優位性

シリーズVol.4は立地についてです。立地は、セフォラミュゼ・ド・ポウの明暗を分けた大きな要素のひとつだと言えます。

化粧品業界セフォラは、出店地選びにおいて、欧米での考え方を踏襲し、都心の一等地に的を絞りました。旗艦店を銀座に置き、渋谷、新宿、心斎橋と日本を代表する大都市の中心に出店します。周辺地区からあらゆる人が集まるこれらの都市部はブランド発信地として申し分のない場所と言えますが、一方でこれらの地域は大手百貨店やドラッグストアが密集し、更にバラエティーショップなど大小様々なコスメショップが乱立する化粧品激戦区でもあります。

とくに、仏発の華やかな高級イメージを打ち出していたセフォラにとって、同様に高級感と華やかさを売りとする大手百貨店の化粧品売場と至近距離で競合するのは、高級ラインの品揃えで百貨店に劣るセフォラには分が悪かったと言えます。

 一方、ミュゼ・ド・ポウは、神奈川県に集中して店舗展開していますが、神奈川県の中でも横浜駅や川崎駅、桜木町周辺の都市部を外し、郊外に出店しています。具体的には、旗艦店を新横浜に置き、他は日吉、青葉台、海老名などです。これらのエリアのショッピング施設は、ファミリー向けのSCが中心で、化粧品売場は主にGMSの化粧品売場やドラッグストア、地場の薬局などになります。そのような環境にあって、本シリーズVol.3でふれたとおり、独自のVMDにこだわったミュゼ・ド・ポウの店舗は、その高級すぎることなく、ほどよくお洒落で洗練された空間により、周辺の競合する業態と大きく差別化されており、地元でも都心にあるような雰囲気のお店で化粧品を選んだり買ったりすることを楽しみたいOLや学生、若い主婦層のニーズ捉えていると思われます。

化粧品業界そしてもうひとつ、Vol.1でふれたとおり、ミュゼ・ド・ポウは国産制度品メーカーの化粧品専門店専用ブランドを扱っていますが、ベネフィークトワニーリサージアルビオンといった主要ブランドの取扱店情報(メーカーWEBサイト参照)によると、ミュゼ・ド・ポウの展開地域における、これらのブランドの取扱店は同店以外には、青葉台で1店あるかないかで、近隣にほぼ競合が無い状況になっています。

こういった競合優位性は、多様な業態がひしめく都市部ではなく、郊外にあるからこそ実現できていると考えられます。また、少し違う視点になりますが、ミュゼ・ド・ポウと姉妹店のフィットケア・デポは同じ地域にドミナント出店を行い、物流・オペレーションの効率化を図っている点もふれておくべきポイントと言えるでしょう。


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2006年09月18日

大型化粧品店の興隆Vol.3:洗練された空間の演出

化粧品業界「ミュゼ・ド・ポウ」の旗艦店、新横浜ペペ店。売場面積は600岼幣紂△つ1フロア構成というその広さを最大限活かしているのが、独自のVMDです。

什器は自社設計で棚の板自体に螢光灯を組み込み、ライトアップを施して商品を美しく見せる工夫がされています。また全ての什器が低めに設計され、客が店内を端から端まで見通せるようにし、誰が見ても何がどこにあるのか一目瞭然にわかるようになっています。そして什器のフレームはすべて同一で、メーカー別のコーナー仕様も、基本フレームの中だけを自由に変える事がでる設計になっているとのこと。まさに環境統一された明るく整然とした店内空間が演出されています。

 一方、「セフォラ」は旗艦店の銀座店を例に取ると売場面積は610屬函▲潺絅次Ε鼻Ε櫂Δ卜瑤蕕叉霏臈絞泙任靴拭しかし3フロア構成になっていたため、店内に入った際に広いという印象はそれほどありません。ミュゼ・ド・ポウとは対照的に外装、内装とも黒が基調、そして深紅のカーペット。取扱商品の価格帯や高級感という点が違いますが、今の韓国のコスメティック店「TODACOSA」が少し雰囲気は似ています。そしてセフォラも、と言いますかセフォラこそVMDにおいては特徴的な趣向をこらしていました。

化粧品業界銀座旗艦店の1階入口近くにて、真赤の円形什器に香水の小ボトルを500個以上ディスプレイして作製した「グレグランス・オルガン」や、2階メイクアップフロアにて、365色のリップスティックを虹のようにディスプレイして展開した「セフォラ・リップスティックコーナー」は陳列に魅せる要素を取り入れた試みでした。しかし、最も客の出入りが多い1階のフロアを日本での需要が少ないフレグランスで敷き詰めたり、逆に日本市場で最も売上が多いスキンケアを一番遠い3階に配置したりと、日本女性の消費性向とのミスマッチが生じていたようです。

一方で前述のミュゼ・ド・ポウの白を基調に環境統一された世界と、とてもよく似た雰囲気を持つ業態があります。
(株)ヌーヴ・エイが展開する「Cosmetic Navi by ROSEMARY」(以下 コスメティックナビ)です。

化粧品業界コスメティックナビは、もともと同社が展開しているコスメティックストア「ROSEMARY」のメガストア版とも言える業態で、セルフからカウンセリング化粧品をはじめ、フレグランス、ヘアケア、ボディケア、サプリメントなど約20,000アイテムの品揃えを誇るという、SKUではミュゼ・ド・ポウに負けず劣らずの大型化粧品店です。ミュゼ・ド・ポウと同じ99年に千葉パルコに第1号をオープンしており、現在は日比谷シャンテと仙台の超大型ショピングセンター、ザ・モール仙台長町にも出店しています。

ミュゼ・ド・ポウとコスメティックナビに共通しているのは、白く明るくすっきりとしたインテリアが、量販店やドラッグストアのように大衆的にならず、ほどよくお洒落で洗練された空間を演出している点で、これが他業態と差別化されている大きなポイントのひとつだと思います。

参考文献:
・化粧品業界 知りたいことがスグわかる!! 2001年版
・カメガヤWEBサイト
・ヌーヴ・エイWEBサイト


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2006年08月14日

大型化粧品店の興隆Vol.2:王道の品揃え

化粧品業界(株)カメガヤが展開する大型化粧品店、ミュゼ・ド・ポウの特徴はまずその品揃えの多さです。自らをコスメティックメガストアと称するにふさわしく、スキンケア、メイクアップといった基本の化粧品から、ヘアケア、ボディケア、ネイルケア、バスグッズ、化粧雑貨、プロ仕様化粧筆、タオルそしてストッキングやコスメ雑誌まで1万点以上のアイテムを取り揃えています。

なかでも化粧品は、化粧品専門店や百貨店で販売されている資生堂コーセーのカウンセリング商品からソフィーナブルジョアなどGMS、ドラッグストアで扱っているセルフ販売品、そしてDHCなど通販化粧品まで幅広い流通の70以上におよぶブランドを取り扱っています(下表参照)。 エスティローダーシャネルなど基本的に百貨店のみでしか流通しない外資系高級ブランドの化粧品とコンビニ専用化粧品こそ取り扱いはありませんが、ミュゼ・ド・ポウに来れば、それ以外の日本における化粧品の有名ブランドはほとんど手に入ると言っても過言ではありません。

一方、銀座に旗艦店をかまえていたセフォラを見てみると、商品構成はフレグランス、メイクアップ、スキンケアがそれぞれ約1/3ずつのシャアを占め、SKUはこちらも1万点以上取り揃えており、品揃えはミュゼ・ド・ポウと同様に豊富です。主力のメイクアップとスキンケアでは資生堂、カネボウマックスファクターの制度品と花王ソフィーナ、そしてLVMH傘下のジバンシーの他外資系ブランドを中心に展開。更にセフォラのPB商品に加え、日本初上陸のブランドも多く取り揃えていました。一方で、外資系高級百貨店ブランド(LVMH傘下以外)の化粧品が無い点ではミュゼ・ド・ポウと同様でした。

ここで品揃えの面での両者の違いですが、ミュゼ・ド・ポウの場合、競合する他の国内のチャネルで売れている人気ブランドは可能な限り網羅したうえで、それ以外のニッチ商品をラインナップしているように思われます。そのため顧客は一歩広大な店内に入ると、目に入るのはどれもこれも知っているブランドばかりという状態で、購買意欲をかきたてられるでしょう。さらにミュゼ・ド・ポウが、資生堂やカネボウなど制度品メーカーのチェインストアになっており、ベネフィークトワニーリサージなど化粧品専門店チャネルで強いブランドも展開していることは、ターゲット層を広げられる強みになっていると思われます。品揃えの面ではメガストアの王道を行っていると言えるでしょう。

一方、セフォラは欧米で成功したビジネスモデルをそのまま日本に持ち込んだため、フレグランスを日常的にあまり使用しない日本の店舗でフレグランスがSKUの1/3を占めたり、また化粧品においてもPBが全体の25%を占めたりするなど、日本人に馴染みのない商品のウェイトが高かったといえます。これはLVMH系列の外資系高級化粧品店という日本には無かったプレステージなイメージの演出があったと思われますが、一方で外資系高級百貨店ブランドの導入に失敗し、欧米の店舗のようには品揃えができなかったことも影響していたようです。

ミュゼ・ド・ポウ新横浜ペペ店の主な化粧品展開ブランド 06年8月
縦軸がメーカー名、横軸はそれぞれのブランドが本来対象としている流通チャネルを表しています(筆者推定含む)。時期が違うため単純比較はできないのですが、セフォラでの展開の有無とその他のセフォラ展開ブランドを記載しています。
ミュゼ01
※セフォラの資生堂その他主な展開ブランド:オードブラン、タフィ、ディグニータ、ナチュラルズ

ミュゼ02
※セフォラのカネボウその他主な展開ブランド:アデッソ、アシュエフ、シンシアローリー、CHIC CHOC、フレイア、ラファイエ、ルイオル、ルナソル

ミュゼ03
ミュゼ04
※セフォラのその他外資系展開ブランド:INUOVI、CELLEX-C、アーバンディーケイ、アヴェンヌ、イングリッシュアイデアズ、エクスピアンス、エッセンシャルエレメンツ、オルラーヌ、カーゴ、コリンズ、ザー、ジバンシー、ジュリーク、スマッシュボックス、タルゴ、デクレオール、ドクターミュラド、ニールズヤード、ニナリッチ、ハードキャンディー、パーフェクトポーション、パイヨ、バボール、バリエール、ピータートーマスロス、フィトメール、ブルーム、ベターボタニカルズ、ベネフィット、ベルサーチ、メイクアップ・フォーエバー、リーラック、ルクレールブラミ、ロクシタン、他セフォラPB

参考文献:
・化粧品業界 知りたいことがスグわかる!! 2001年版
・資生堂アニュアルレポート


化粧品業界
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2006年06月25日

大型化粧品店の興隆Vol.1:新業態誕生

化粧品業界 新横浜プリンスホテルのショッピングセンター1階を歩くと、ひときわ明るく目を引く化粧品店があります。一歩、店内に入れば、その圧倒的な広さは圧巻。店名は「ミュゼ・ド・ポウ」。神奈川を拠点とするドラッグストアチェーンのカメガヤが展開する大型化粧品専門店の旗艦店で、化粧品店としては日本最大級の店舗です。

日本の化粧品小売市場の出荷金額はこの10年間、ほぼ横ばいの状態を維持していますが、流通チャネル別販売シェアでは大きな変化が起きています。少し古いデータになりますが、98年と03年の販売実績を比較すると、薬局・薬店が5年間で販売シェアを5.2%増やしたのをはじめ、百貨店、CVS、通販が販売シェアを伸ばしています。(下図参照)

薬局・薬店が伸長した理由は、ドラッグストアが値引き販売によって、急激に売上および店舗数を拡大したため。これに対し、百貨店は新規ブランドを導入したり高度なカウンセリングを行ったりするなど、価格以外の価格が評価されて販売実績増に繋がっているようです。 (参照:2005年 百貨店 化粧品市場 シェア Vol.2) CVSは、メーカーとの共同開発商品など他の業態にはない商品を品揃えすることで販売実績を伸ばしています。また通販は、低価格、機能効果重視の独自商品のヒットとインターネット通販の急速な普及によって、急成長しています。 (参照:急成長を成し遂げた通販化粧品企業)

一方、ドラッグストア急伸の影響を受け、化粧品専門店、量販店はシェア低下傾向にあります。化粧品専門店が扱う国産高級化粧品と、量販店が扱っている低価格化粧品のいずれも、ドラッグストアで1〜2割引で販売されているのが一因にあります。

このように、日本の化粧品販売チャネル構成が変化する最中、99年に、大型化粧品専門店という新しい業態が日本で複数誕生しました。ひとつは、LVMHグループの化粧品小売業で、英仏米など世界数カ国に数百店舗を持つ「セフォラ」、そしてもう一方は、神奈川県を拠点とするカメガヤが新規にオープンさせた「ミュゼ・ド・ポウ」です。

結論から言えば、セフォラはその後、わずか2年で日本から撤退、一方、ミュゼ・ド・ポウは、翌年2号店、3号店をオープンさせ、順調に事業を拡大し、現在は7店舗を展開しています。この両社の明暗の原因は何だったのか。次号にて、考えていきたいと思います。

■国内化粧品販売チャネルシェア推移
チャネルシェア

参考文献:
<業界の最新常識>よくわかる化粧品業界


化粧品業界
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