■連載シリーズ

2006年12月18日

大型化粧品店の興隆Vol.5:店内環境ゆえのサービス力

前回までに、ミュゼ・ド・ポウの品揃えとVMD、更に立地と見てきましたが、もう一点の重要なポイントとしてサービスがあります。

まず広大な店内に並ぶほとんど全ての商品がオープンディスプレイになっており、テスターが設置されています。テスター自体はセルフ化粧品売場ではごく普通ですが、ミュゼ・ド・ポウの場合、スペースが広いので落ち着いて試用することができます。

化粧品業界また、店内に設置された本格的メイクアップスタジオにて、メイクアップアーティストが顧客のスキンケアやメークの相談に応じたり、また同じく店内に設置された大手制度品メーカーのカウンターでは、美容部員が肌状態のチェックやカウンセリングに応じたりしています。

これらは通常、専門店や百貨店で行われているようなレベルのサービスであり、利用者にとってそのようなサービスが近場のセルフ形式の大型店で受けられるのはうれしいところです。更にミュゼ・ド・ポウでは、広い敷地を活かし、店内にパックやマッサージが無料のフェイシャルエステブースやネイルサロンまで完備しています。

同社では、メイクアップスクールの在学生や卒業生をアルバイトで雇用しているようで、そういった人達に経験をつむ場を提供しているという点でもよいと思います。本シリーズではベンチマークとしてセフォラをあげていますが、セフォラでは店内に配置された店員が顧客の求めに応じてメイクの相談などに対応していました。

ミュゼ・ド・ポウのこれら上記のサービスは、立地上、または商品ライン的に同社と競合するGMSやドラッグストアと一線を画する差別化要素になっており、ロイヤルカスタマーの育成にも繋がっていると思います。ただ最近はその競合であるドラッグストアにも変化が見られます。

価格訴求一辺倒の値引き競争で顧客を獲得し化粧品販売チャネルとしての存在感を増してきたドラッグストアですが、自らも利益を確保できない状態に陥る中で、脱価格競争へシフトしつつあります。それには、値引き訴求が難しいNPP(ノープリントプライス)ブランド商品が増えてきていることも影響しています。そこで、価格以外の訴求ポイントとして注目しているのがカウンセリングです。今、大手DSはカウンセリングができる人材の配置に力を入れています。

化粧品業界マツモトキヨシは、ビューティー専門スタッフを各店に配置する施策を実施、更に同社の設けた試験をクリアした精鋭部隊であるビューティー専門のスーパーバイザーの配置も行っており、後者はすでに10人を越えているそうです。特にPB化粧品を展開する同社は、知名度の低いPB商品の推奨販売のためにもビューティー専門スタッフによる販売力強化は不可欠になっています。

またセイジョーは、元美容部員で即戦力となる専属のビューティーパート20〜25人を主力ビューティー特化型店に配属、更に高い専門知識を持ち、美容スタッフへの教育やビューティー特化型店の化粧品売場を統括するビューティーカウンセラー12人をすでに有しているとのことです。

女性らしい店内の雰囲気、そしてゆったりしたスペースでのカウンセリングという意味で、店内環境も含めたサービスとしては、ミュゼ・ド・ポウにまだ軍配があがります。ただしDS各社もカウンセリングに注力してきておりソフト面での競争が激しくなってきていると言えます。

参考文献:
・カメガヤホームページ
・週刊粧業


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2006年10月24日

花王・カネボウ統合Vol.8:変わる花王の百貨店売場

花王のカネボウ統合において、花王がカネボウに求めた大きなものはカネボウのブランドに人々が抱くリッチで華やかなイメージであろうと前章にて述べましたが、その統合の効果の表れか、百貨店の花王コーナーが変わってきています。

sofina花王の化粧品といえば「花王ソフィーナ」がブランドであり、百貨店のコーナーも長年ソフィーナのエメラルド色を背景としたブランドロゴを冠した造りになっていました。そしてそこでは、花王の百貨店専門化粧品である「est(エスト)」の他にも「AUBE」「VERY VERY」など他チャネルでも販売しているソフィーナ商品が販売されていました。そのため、百貨店にあっても花王のコーナーはあくまでソフィーナのコーナーであり、周りの高級ブランドと比較して大衆寄りの印象が拭えませんでした。

ところが、今年、百貨店の改装や化粧品フロアの売場移動など様様なタイミングにおいて、百貨店の化粧品フロアから「ソフィーナ」のコーナーが消え、代わって「エスト」単独のコーナー(エストサイエンスプラザ)が次々と誕生しています。「ソフィーナ」は主力チャネルである量販店、ドラッグストアに特化し、百貨店での販売は「エスト」へ一本化する動きが進んでいます。「エスト」のブランドカラーで統一されたコーナーは従来の「花王ソフィーナ」のコーナーに比べ、高級感が格段にアップし、上質な雰囲気を漂わせています。

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そして、今年9月の「クリームメイクアップリフトインプレッション」の発売が、その傾向に拍車をかけました。この商品は肌の表面に「光の等高線」をつくりだすというコンセプトのファンデーションですが、その容器がとてもきらびやかで、エストブランドの象徴であるダイアモンドと、上記の光の等高線を表現したような形になっています。9月2日の発売日以降、「クリームメイクアップリフトインプレッション」のビジュアルが全面に出された「エスト」のコーナーは実に美しくなり、花王の百貨店コーナーがこの1年で明らかに変わったことを印象づけています。

est2 また、エストサイエンスプラザは化粧品メーカーとして初めて、旭硝子製の高機能・高級ガラス「クラリティア」及びミラー「サンミラー リアリティア」を標準採用しているとのこと。旭硝子によると、エストブランドの象徴であるダイアモンドの持つ高透過感を「クラリティア」が表現し、顧客の肌の状態及び色を的確に判断し、最良の商品を提供するという消費者視点に立った花王の売場づくりの実現を「サンミラー リアリティア」が可能にしているとうこと。きらびやかな売場の演出にはこのような細部に仕掛があるということです。

本格的な高級ブランドコミュニケーションを開始した「エスト」、もはや従来の花王のイメージはないといってもいいでしょう。

参考資料:旭硝子プレスリリース



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2006年10月09日

大型化粧品店の興隆Vol.4:立地ゆえの競合優位性

シリーズVol.4は立地についてです。立地は、セフォラミュゼ・ド・ポウの明暗を分けた大きな要素のひとつだと言えます。

化粧品業界セフォラは、出店地選びにおいて、欧米での考え方を踏襲し、都心の一等地に的を絞りました。旗艦店を銀座に置き、渋谷、新宿、心斎橋と日本を代表する大都市の中心に出店します。周辺地区からあらゆる人が集まるこれらの都市部はブランド発信地として申し分のない場所と言えますが、一方でこれらの地域は大手百貨店やドラッグストアが密集し、更にバラエティーショップなど大小様々なコスメショップが乱立する化粧品激戦区でもあります。

とくに、仏発の華やかな高級イメージを打ち出していたセフォラにとって、同様に高級感と華やかさを売りとする大手百貨店の化粧品売場と至近距離で競合するのは、高級ラインの品揃えで百貨店に劣るセフォラには分が悪かったと言えます。

 一方、ミュゼ・ド・ポウは、神奈川県に集中して店舗展開していますが、神奈川県の中でも横浜駅や川崎駅、桜木町周辺の都市部を外し、郊外に出店しています。具体的には、旗艦店を新横浜に置き、他は日吉、青葉台、海老名などです。これらのエリアのショッピング施設は、ファミリー向けのSCが中心で、化粧品売場は主にGMSの化粧品売場やドラッグストア、地場の薬局などになります。そのような環境にあって、本シリーズVol.3でふれたとおり、独自のVMDにこだわったミュゼ・ド・ポウの店舗は、その高級すぎることなく、ほどよくお洒落で洗練された空間により、周辺の競合する業態と大きく差別化されており、地元でも都心にあるような雰囲気のお店で化粧品を選んだり買ったりすることを楽しみたいOLや学生、若い主婦層のニーズ捉えていると思われます。

化粧品業界そしてもうひとつ、Vol.1でふれたとおり、ミュゼ・ド・ポウは国産制度品メーカーの化粧品専門店専用ブランドを扱っていますが、ベネフィークトワニーリサージアルビオンといった主要ブランドの取扱店情報(メーカーWEBサイト参照)によると、ミュゼ・ド・ポウの展開地域における、これらのブランドの取扱店は同店以外には、青葉台で1店あるかないかで、近隣にほぼ競合が無い状況になっています。

こういった競合優位性は、多様な業態がひしめく都市部ではなく、郊外にあるからこそ実現できていると考えられます。また、少し違う視点になりますが、ミュゼ・ド・ポウと姉妹店のフィットケア・デポは同じ地域にドミナント出店を行い、物流・オペレーションの効率化を図っている点もふれておくべきポイントと言えるでしょう。


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2006年09月18日

大型化粧品店の興隆Vol.3:洗練された空間の演出

化粧品業界「ミュゼ・ド・ポウ」の旗艦店、新横浜ペペ店。売場面積は600岼幣紂△つ1フロア構成というその広さを最大限活かしているのが、独自のVMDです。

什器は自社設計で棚の板自体に螢光灯を組み込み、ライトアップを施して商品を美しく見せる工夫がされています。また全ての什器が低めに設計され、客が店内を端から端まで見通せるようにし、誰が見ても何がどこにあるのか一目瞭然にわかるようになっています。そして什器のフレームはすべて同一で、メーカー別のコーナー仕様も、基本フレームの中だけを自由に変える事がでる設計になっているとのこと。まさに環境統一された明るく整然とした店内空間が演出されています。

 一方、「セフォラ」は旗艦店の銀座店を例に取ると売場面積は610屬函▲潺絅次Ε鼻Ε櫂Δ卜瑤蕕叉霏臈絞泙任靴拭しかし3フロア構成になっていたため、店内に入った際に広いという印象はそれほどありません。ミュゼ・ド・ポウとは対照的に外装、内装とも黒が基調、そして深紅のカーペット。取扱商品の価格帯や高級感という点が違いますが、今の韓国のコスメティック店「TODACOSA」が少し雰囲気は似ています。そしてセフォラも、と言いますかセフォラこそVMDにおいては特徴的な趣向をこらしていました。

化粧品業界銀座旗艦店の1階入口近くにて、真赤の円形什器に香水の小ボトルを500個以上ディスプレイして作製した「グレグランス・オルガン」や、2階メイクアップフロアにて、365色のリップスティックを虹のようにディスプレイして展開した「セフォラ・リップスティックコーナー」は陳列に魅せる要素を取り入れた試みでした。しかし、最も客の出入りが多い1階のフロアを日本での需要が少ないフレグランスで敷き詰めたり、逆に日本市場で最も売上が多いスキンケアを一番遠い3階に配置したりと、日本女性の消費性向とのミスマッチが生じていたようです。

一方で前述のミュゼ・ド・ポウの白を基調に環境統一された世界と、とてもよく似た雰囲気を持つ業態があります。
(株)ヌーヴ・エイが展開する「Cosmetic Navi by ROSEMARY」(以下 コスメティックナビ)です。

化粧品業界コスメティックナビは、もともと同社が展開しているコスメティックストア「ROSEMARY」のメガストア版とも言える業態で、セルフからカウンセリング化粧品をはじめ、フレグランス、ヘアケア、ボディケア、サプリメントなど約20,000アイテムの品揃えを誇るという、SKUではミュゼ・ド・ポウに負けず劣らずの大型化粧品店です。ミュゼ・ド・ポウと同じ99年に千葉パルコに第1号をオープンしており、現在は日比谷シャンテと仙台の超大型ショピングセンター、ザ・モール仙台長町にも出店しています。

ミュゼ・ド・ポウとコスメティックナビに共通しているのは、白く明るくすっきりとしたインテリアが、量販店やドラッグストアのように大衆的にならず、ほどよくお洒落で洗練された空間を演出している点で、これが他業態と差別化されている大きなポイントのひとつだと思います。

参考文献:
・化粧品業界 知りたいことがスグわかる!! 2001年版
・カメガヤWEBサイト
・ヌーヴ・エイWEBサイト


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2006年08月14日

大型化粧品店の興隆Vol.2:王道の品揃え

化粧品業界(株)カメガヤが展開する大型化粧品店、ミュゼ・ド・ポウの特徴はまずその品揃えの多さです。自らをコスメティックメガストアと称するにふさわしく、スキンケア、メイクアップといった基本の化粧品から、ヘアケア、ボディケア、ネイルケア、バスグッズ、化粧雑貨、プロ仕様化粧筆、タオルそしてストッキングやコスメ雑誌まで1万点以上のアイテムを取り揃えています。

なかでも化粧品は、化粧品専門店や百貨店で販売されている資生堂コーセーのカウンセリング商品からソフィーナブルジョアなどGMS、ドラッグストアで扱っているセルフ販売品、そしてDHCなど通販化粧品まで幅広い流通の70以上におよぶブランドを取り扱っています(下表参照)。 エスティローダーシャネルなど基本的に百貨店のみでしか流通しない外資系高級ブランドの化粧品とコンビニ専用化粧品こそ取り扱いはありませんが、ミュゼ・ド・ポウに来れば、それ以外の日本における化粧品の有名ブランドはほとんど手に入ると言っても過言ではありません。

一方、銀座に旗艦店をかまえていたセフォラを見てみると、商品構成はフレグランス、メイクアップ、スキンケアがそれぞれ約1/3ずつのシャアを占め、SKUはこちらも1万点以上取り揃えており、品揃えはミュゼ・ド・ポウと同様に豊富です。主力のメイクアップとスキンケアでは資生堂、カネボウマックスファクターの制度品と花王ソフィーナ、そしてLVMH傘下のジバンシーの他外資系ブランドを中心に展開。更にセフォラのPB商品に加え、日本初上陸のブランドも多く取り揃えていました。一方で、外資系高級百貨店ブランド(LVMH傘下以外)の化粧品が無い点ではミュゼ・ド・ポウと同様でした。

ここで品揃えの面での両者の違いですが、ミュゼ・ド・ポウの場合、競合する他の国内のチャネルで売れている人気ブランドは可能な限り網羅したうえで、それ以外のニッチ商品をラインナップしているように思われます。そのため顧客は一歩広大な店内に入ると、目に入るのはどれもこれも知っているブランドばかりという状態で、購買意欲をかきたてられるでしょう。さらにミュゼ・ド・ポウが、資生堂やカネボウなど制度品メーカーのチェインストアになっており、ベネフィークトワニーリサージなど化粧品専門店チャネルで強いブランドも展開していることは、ターゲット層を広げられる強みになっていると思われます。品揃えの面ではメガストアの王道を行っていると言えるでしょう。

一方、セフォラは欧米で成功したビジネスモデルをそのまま日本に持ち込んだため、フレグランスを日常的にあまり使用しない日本の店舗でフレグランスがSKUの1/3を占めたり、また化粧品においてもPBが全体の25%を占めたりするなど、日本人に馴染みのない商品のウェイトが高かったといえます。これはLVMH系列の外資系高級化粧品店という日本には無かったプレステージなイメージの演出があったと思われますが、一方で外資系高級百貨店ブランドの導入に失敗し、欧米の店舗のようには品揃えができなかったことも影響していたようです。

ミュゼ・ド・ポウ新横浜ペペ店の主な化粧品展開ブランド 06年8月
縦軸がメーカー名、横軸はそれぞれのブランドが本来対象としている流通チャネルを表しています(筆者推定含む)。時期が違うため単純比較はできないのですが、セフォラでの展開の有無とその他のセフォラ展開ブランドを記載しています。
ミュゼ01
※セフォラの資生堂その他主な展開ブランド:オードブラン、タフィ、ディグニータ、ナチュラルズ

ミュゼ02
※セフォラのカネボウその他主な展開ブランド:アデッソ、アシュエフ、シンシアローリー、CHIC CHOC、フレイア、ラファイエ、ルイオル、ルナソル

ミュゼ03
ミュゼ04
※セフォラのその他外資系展開ブランド:INUOVI、CELLEX-C、アーバンディーケイ、アヴェンヌ、イングリッシュアイデアズ、エクスピアンス、エッセンシャルエレメンツ、オルラーヌ、カーゴ、コリンズ、ザー、ジバンシー、ジュリーク、スマッシュボックス、タルゴ、デクレオール、ドクターミュラド、ニールズヤード、ニナリッチ、ハードキャンディー、パーフェクトポーション、パイヨ、バボール、バリエール、ピータートーマスロス、フィトメール、ブルーム、ベターボタニカルズ、ベネフィット、ベルサーチ、メイクアップ・フォーエバー、リーラック、ルクレールブラミ、ロクシタン、他セフォラPB

参考文献:
・化粧品業界 知りたいことがスグわかる!! 2001年版
・資生堂アニュアルレポート


化粧品業界
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2006年07月09日

花王・カネボウ統合Vol.7:リッチで華やかなイメージ

本シリーズ前号にてふれた通り、カネボウは70年代、80年代において、資生堂と競うように女優や有名歌手を起用したシーズンキャンペーンを展開していました。それは常にトレンドを先取りし、一貫して華やかでおしゃれ、そして憧れと夢のイメージにあふれ、マス広告を介して世の女性の心を捉えてきました。資生堂、カネボウという企業ブランドが持つ、リッチで華やかなイメージは、この頃に確固たる礎が築かれたのだと思われます。

化粧品業界そして、現代の花王がカネボウに求めた最も大きなものが、そのリッチで華やかな企業ブランドイメージだと言われています。前述のように、GMSを基点に商品の機能性をPRする戦略で成功したソフィーナの場合、今では有名女優などを使ったCMを打っていますが、消費者の中のイメージは、華やかにはなりきらないようです。

ところで、人気の女優や有名歌手を起用したカネボウのシーズンキャンペーンのTVCMの多くは、女優の映像とCMソングが全面に出ており、後は、短いコピーと商品写真が最後に映るといったもので、商品自体の持つ美容科学上の「売り」との関連性が薄く、イメージ先行のような印象を受けます。しかし、このイメージ先行の部分が実は重要で、商品とは全く別の所で存在するイメージの部分を真剣に考えていく作業を行っていくことで、たとえ商品が変わっても、変わらずに世の女性を惹きつけるブランドという力が育成されるのだと思われます。

たとえば、モデルに誰を使うかを決めるには、世の中の女性が持つライフスタイルや、恋愛、仕事への価値観、そして性格など多種多様な人間性において、今後、主流になりそうなトレンドを見極め、その方向性のシンボル的存在が誰なのかを考えます。

一般に化粧品に求められるベネフィット(美白や潤いなどの機能効果やコストパフォーマンス)よりも、その化粧品を使えばどんな女性になれるのかということの方が、買う側にとっても、意識されやすいのでしょう。

カネボウが、’79年から展開したレディ’80(エイティー)キャンペーンは、当時のキャリアウーマンという言葉に体表される女性の社会的地位の向上に着眼し、「’80年代に羽ばたく新しい女性を求めます」という宣言のもとにスタートしたロングランキャンペーンでした。そして、そのレディ’80にふさわしい女性が、全国の応募者25,704人から選ばれたのですが、その条件は、健康的な美しさ、ゆたかなファッションセンス、人間としての普遍的な魅力であるやさしさ、知性とセンスを兼備した国際感覚、そしてゆたかな教養でささえられる社会感覚といった5つの内容。選ばれたのは当時21歳の松原千明でした。

☆主なレディ'80 キャンペーン
'79年 レディ'80宣言
'80年春 「唇よ、熱く君を語れ」松原千明
歌:渡辺真知子
'81年 レディ'80エビータ
※ミュージカル「エビータ」連動キャンペーン
'82年春 「浮気な、パレットキャット」小池玉緒
歌:ハウンドドッッグ
'83年夏「君に、胸キュン」相田寿美緒
歌:YMO
'84年 レディ'80バイオリップスティック
'85年 レディ'80プロ感度BIOカラーネットワーク


参考文献:
化粧品のブランド史―文明開化からグローバルマーケティングへ


化粧品業界
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2006年06月25日

大型化粧品店の興隆Vol.1:新業態誕生

化粧品業界 新横浜プリンスホテルのショッピングセンター1階を歩くと、ひときわ明るく目を引く化粧品店があります。一歩、店内に入れば、その圧倒的な広さは圧巻。店名は「ミュゼ・ド・ポウ」。神奈川を拠点とするドラッグストアチェーンのカメガヤが展開する大型化粧品専門店の旗艦店で、化粧品店としては日本最大級の店舗です。

日本の化粧品小売市場の出荷金額はこの10年間、ほぼ横ばいの状態を維持していますが、流通チャネル別販売シェアでは大きな変化が起きています。少し古いデータになりますが、98年と03年の販売実績を比較すると、薬局・薬店が5年間で販売シェアを5.2%増やしたのをはじめ、百貨店、CVS、通販が販売シェアを伸ばしています。(下図参照)

薬局・薬店が伸長した理由は、ドラッグストアが値引き販売によって、急激に売上および店舗数を拡大したため。これに対し、百貨店は新規ブランドを導入したり高度なカウンセリングを行ったりするなど、価格以外の価格が評価されて販売実績増に繋がっているようです。 (参照:2005年 百貨店 化粧品市場 シェア Vol.2) CVSは、メーカーとの共同開発商品など他の業態にはない商品を品揃えすることで販売実績を伸ばしています。また通販は、低価格、機能効果重視の独自商品のヒットとインターネット通販の急速な普及によって、急成長しています。 (参照:急成長を成し遂げた通販化粧品企業)

一方、ドラッグストア急伸の影響を受け、化粧品専門店、量販店はシェア低下傾向にあります。化粧品専門店が扱う国産高級化粧品と、量販店が扱っている低価格化粧品のいずれも、ドラッグストアで1〜2割引で販売されているのが一因にあります。

このように、日本の化粧品販売チャネル構成が変化する最中、99年に、大型化粧品専門店という新しい業態が日本で複数誕生しました。ひとつは、LVMHグループの化粧品小売業で、英仏米など世界数カ国に数百店舗を持つ「セフォラ」、そしてもう一方は、神奈川県を拠点とするカメガヤが新規にオープンさせた「ミュゼ・ド・ポウ」です。

結論から言えば、セフォラはその後、わずか2年で日本から撤退、一方、ミュゼ・ド・ポウは、翌年2号店、3号店をオープンさせ、順調に事業を拡大し、現在は7店舗を展開しています。この両社の明暗の原因は何だったのか。次号にて、考えていきたいと思います。

■国内化粧品販売チャネルシェア推移
チャネルシェア

参考文献:
<業界の最新常識>よくわかる化粧品業界


化粧品業界
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2006年06月11日

ランコムの躍進Vol.9:最終回 グローバル企業

プロモーション
化粧品業界ランコムは、TVCMはほとんど実施せず、女性誌や新聞に外国人の女優やモデルを起用したインパクトのある全面カラー広告を出すことで、ブランドイメージを醸成しています。またサンプリング、限定品の発売、カウンセリングの強化、専属メイクアップアーティストによるサービス、愛用者の会の組織化など顧客満足度を高める施策を継続的に実施しています。ただ、これらは外資系高級ブランドに共通するプロモーション展開であり競争が熾烈で差別化は簡単ではありません。

まとめ
以上、9回にわたってランコムについて考えてきましたが、まとめるとランコムが日本で成功した特筆すべき要因は2つあると言えます。第一は日本での研究開発及び生産体制の早期確立により日本女性に合う商品を提供してきたこと、第二は競合よりも魅力的な売場の獲得に成功してきたことです。とりわけ「日本女性のために作られた外資系ブランド化粧品」という新しい価値を市場に持ち込んだ点は大きかったと言えます。

これには、ロレアルが国際組織において海外子会社に権限を大幅に委譲していることも関係しているようです。80年代にロレアルの国際組織の礎を作ったCEO、ダルは、当時、モデルにしようと考えていたアメリカの多国籍企業が期待外れだったと言っています。アメリカの企業は海外に進出するさいに、アメリカ式の手法をそのまま適用しようとする傾向があるというのがその理由でした。そこで、ダルはアメリカ式に頼らず、一から国際組織を作っていたのですが、その際、グローバル戦略とマルチドメスティック戦略をうまく融合できる国際組織を目指したのです。

例えば、プロモーションの手法や内容について、海外子会社の担当者はパリ本部の事業部長の指示を受けますが、指揮命令系統上では海外子会社の担当者はその海外子会社の社長の下に置きました。そして海外子会社の社長には本社の副社長の肩書きと権限を与え、高い独立性を確保させたのです。

このダルの思想があってこそ、日本ロレアルがパリ本部のブランド哲学を守りながら、世界一うるさい日本女性に特化した商品開発を積極的に行うことができたと思われます。

終わりに
このように、90年代後半から2000年にかけて日本市場で急成長を成し遂げたランコムですが、その後失速し、最近は低迷を続けています。度々の発売日延期や中止による顧客からの信頼失墜、新客を固定化できない現場の状況などいくつかの原因が挙げられており、再び成長路線に戻るには時間がかかると言われています。

ただ、考えてみると化粧品といえども、高級ブランド品はブランド品。流行り廃りのトレンドはあって当然かもしれません。また、もう一点、ランコムを展開するロレアルが、世界最大の化粧品企業であることも意識しなくてはいけません。

化粧品業界 昨年秋に実施されたある調査会社のレポートによると、中国の化粧品市場において、ランコムは20 歳以上の女性化粧品ユーザーの知名度ナンバー1。現在主に使用している化粧品について聞いたところ、基礎化粧品、ベースメイク、機能化粧品、メイクアップの4 つのカテゴリ全てにおいて、ランコムは5 位以内に入っています。また中国で化粧品の販売額が全国トップ10位にあるデパートを調べた別の調査の結果では、ランコムの売り上げが最も高いことが明らかになっています。

成熟している日本市場での失地挽回も重要ですが、今は成長著しい中国での投資拡大を図る。ロレアルが世界でブランドビジネスを展開するグローバル企業であることを考えれば理にかなっているように思えます。
(シリーズ:ランコムの躍進 完)

参考文献:
われわれは、いかにして世界一になったか?―ロレアル 最も大きく、最も国際的な会社の成功物語

調査データ
インフォプラント 2005年11月24日発表【東アジアの化粧品ブランド事情】
China Radio International「中国都市部女性とブランド品」


化粧品業界
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2006年05月14日

ランコムの躍進Vol.8:出店戦略の勝利

販売チャネル  化粧品業界
ランコムの販売チャネルは百貨店です。’80年代半ばまでは、百貨店の他にも化粧品専門店、美容室、ソニープラザなどで販売されていましたが、販売拠点が膨れ上がり、美容部員の養成が追いつかないという事態が起きたため、販売チャネルを高級感のある百貨店に絞りました。

しかし、かつてのロレアルのCEO、 フランソワ・ダルによると、そもそもランコムが日本の百貨店参入当時にあてがわれた売場はフロアの末端だったようです。そのためダルは、西武、三越、高島屋といった百貨店の閉ざされた社会に入り込むことができる交渉の巧みな人間が必要だと考え、パリからこの分野に実績のある高級幹部を日本に送り込みます。ランコムの役員ジル・ヴェイユは妻子を連れ、数年間、東京に勤務することを受け入れます。彼はまもなく日本も子会社の社長になり、結局6年以上も日本に滞在しました。

ヴェイユの業績は素晴らしく、ランコムのコーナーを百貨店の中心部に移し、さらにスペースを広げることに成功しました。これには経費もかかったが、すぐに回収できました。ダルによると、なにより伝統がものをいう日本で成功するには、長期滞在が必要であり、ヴェイユのような人間がいたことは大きな成功要因だったとのことです。

そして、90年代後半から始まった相次ぐ百貨店の改装による化粧品売場の増床で、ランコムの売場拡大の拍車がかかります。’99年に新宿伊勢丹がランコムの売場を1.5倍に増床したのをきっかけに、主要都市の百貨店で売場リニューアルが行われる度に、売場面積を約2倍にしていく勢いで大型化が進み、ランコムの平均売場面積は32屬ら65屬冒加、2002年には、池袋西武に100屬箸い国内最大級のランコムの売場が開設されました。

すでに売上が好調だったランコムに対して百貨店側の好意的な支援があったことは容易に想像できますが、一方で同様に成績好調だったシャネルもコーナー拡大を推し進め、両社は常に競合したと言われています。またある百貨店の話しでは、ランコムとシャネルが売場争奪戦をするところでは、ブランドビジネス開拓者を自負するエスティローダーグループが必ず防戦に入り、更に日本を代表する資生堂が面子をかけて参戦するという状態で、メガブランドによる売場争奪戦が過熱していたようです。

2003年に百貨店の改装も一巡し情勢が落ち着くと、ランコムは結局、多くの有力百貨店において、エスカレータ前やエントランス前、もしくはフロア中央のロケーションに広いスペースを確保していました。

ランコム店舗数では約100店舗で展開、これは競合の外資系大型ブランドより少ない店舗数ですが、100店以上の展開は考えず、既存店における売上増を目指すとしています。

展開店舗を有力百貨店に限定し、高級感や希少性を演出しながら、競合より広くロケーションの良い売場を獲得していったことはランコムの躍進に大きく寄与した要因であったと思われます。

参考文献:
・われわれは、いかにして世界一になったか?―ロレアル 最も大きく、最も国際的な会社の成功物語
・図解でスッキリ!化粧品業界 知りたいことがスグわかる
国際商業


化粧品業界
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2006年04月30日

ランコムの躍進Vol.7:ターゲットと価格設定

前回はランコムの高い国内生産比率についてふれましたが、今回はランコムのターゲットと価格設定について見てみたいと思います。

ターゲット
化粧品業界  ‘02年当時のランコムの発表によれば、ランコムのコアターゲットは25〜35歳の女性です。エクステンシルのヒット以前からマスカラに強みを持っていましたが’90年代後半から美白と日焼け対策商品を含めたスキンケアの拡販に重点を置いてきていました。その結果、'02年頃にはスキンケアとメイクアップの構成比率がほぼ半々になり、ともに2桁成長を維持していました。

ただし同様の戦略は他の外資系競合も採用しており、競争は激しくなっていました。なぜなら、スキンケアは日本最大の市場であり、また25〜35歳の女性というのは、流行に敏感なうえ経済的に余裕のある働く女性が中心の魅力的なセグメントだからです。

ワンシーズンごとの移り変わりが激しいメイクアップ商品に比べ、比較的息の長いスキンケア商品の方が利益を取りやすいというメーカー側の事情もあるといわれています。

BOBBI BROWNのようなメイクアップアーティストブランドでさえ、立ち上げ当初6〜7%だったスキンケアの売上シェアが、当時15%まであがっており、また同じくメイクアップアーティストブランドとして出発したRMKも、スキンケアへ商品ラインの拡大を行い、年率2桁の急成長を続けていました。

価格設定
 スキンケアの代表的なアイテムについて、当時の外資系メガブランド5社に資生堂の5ブランドを加えた10ブランドの価格設定を比較してみました。(下表参照)

するとランコム、エスティローダーディオールシャネルが、ほぼ同じレンジ内の価格設定となっており、クリニークは、それより平均して1,000円程度低めの価格設定になっていました。

この価格設定は、クリニークがかつてのトップブランドのポジジョンから凋落し、入門ブランドに変わりつつあることに影響していると考えられます。つまりクリニークでプレステージ化粧品を初体験した顧客が、年齢と収入が上がるにつれて、少し高めのランコムやシャネルに移行しているのではないかと言われています。

一方、資生堂は百貨店ルートだけでもブランドが複数存在し、価格設定がそれぞれ異なります。ターゲットを絞らず総花的な展開をしていると言えます。最も高価格帯のクレ・ド・ポーボーテが好調で安定した成長を見せていましたが、業界関係者の中には、同社に対してクレ・ド・ポーボーテ以外のブランドを本気で育てる気があるのか疑問視する声もあったようです。

百貨店ではSISLEYのクリーム、シスレイヤ (2万9500円)やDe La Marのクリーム(15万円)などの高額でありながら売れるスター製品も出現していましたが、ランコムなどメガブランド5社は、コアターゲットの25〜35歳の女性が継続的に購入できるレンジに価格を抑えていました。

■スキンケアアイテム中心価格表('03〜'04年)
化粧品業界

<出所>
2003年版 化粧品マーケティング総監/矢野経済研究所
化粧品業界知りたいことがスグわかる!!/三田村蕗子


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