2006年11月18日

ヒロインメイク 星降る瞳で心をつかむ

化粧品業界化粧品の訴求には女性の感性に訴えかける情緒的な要素と、商品の品質を謳う機能的な要素の2つのバランスが求められます。一般的に高級化粧品になるほど、情緒的な部分の比率が高くなると言われていますが、低価格のセルフの市場でも、情緒的要素のマーケティングが成功のきっかけとなったケースはあります。

記憶に新しいところでは03年に発売された資生堂の「マジョリカ・マジョルカ」。「魔法のような即変身コスメ」というコンセプトに基づく情緒的ストーリーを、商品デザイン、パッケージ、販売台そして広告などに徹底して貫き、それに共感するターゲット層をとらえ大ヒットしました。そして最近、新たな成功例として注目されているのが、05年2月に発売された伊勢半の「ヒロインメイク」です。

化粧品業界「ヒロインメイク」といえば、ユーザーではない女性でもGMSやドラッグストアの化粧品売場で一度は目にした記憶があるでしょう。ヒット商品のロング&カールマスカラ ピンクの地色にまるで少女マンガから飛び出したような女の子の顔が大きく描かれ、「天まで届け!マスカラ」と大きくコピーが書かれたそのパッケージは、強烈と言っていいほどのインパクトがあります。

商品開発の過程で綿密な調査に基づく消費者の声を活用したそうですが、それでこのようなトゲのあるデサインやコピーを策定できたのはむしろ意外と言えます。

発売直後から関心を持った女性達のクチコミが@コスメに書き込まれはじめ、7点満点で6点近い高い評価をいきなり獲得します。その後、ユーザー層の拡大に合わせてクチコミが自然発生的に増加、結果、ヒロインメイクのロング&カールマスカラは2005年@コスメ ベストコスメ大賞を受賞します。

口コミの内容から見えるヒットの要因のポイントは、あえてターゲットを絞ってトゲのある世界観で勝負したことと、低価格ながら効果を実感できる商品力の2点だと思われます。

「思わずパケ買い!!」「ベルバラ的な外観に一瞬にして心を奪われての購入」「ずっと前、初めて見たとき一目惚れ♪ジャケや、宣伝文句(?)でさらに惚れ♪」「ヴィジュアルショック!!」など、なるほどこのパッケージの威力はすごいですが、こんなパッケージでは恥ずかしいという女性もいるはずです。ただそこで万人ウケを意識したらあの世界観は実現しなかったでしょう。

また一方で、「睫毛がバチコーンっと上を向きます」「1日中持続!」「パンダにならない」など、このマスカラはカール力やキープ力、そしてにじみにくさといった商品力の点でも高い評価を得ています。つまり冒頭の情緒的要素と機能的要素の両方が強いため、好循環でクチコミが増加、ユーザーの裾野拡大に繋がったと思われます。この点は、マジョリカ・マジョルカのヒット商品、オートマティックライナーのケースと非常によく似ています。

06年2月には、「落ちにくい」というマスカラのネガティブな口コミ評価に対応してリムーバーを発売、現在は、アイメイク6アイテムとベースメイク3アイテムのラインナップを展開。いずれも、パッケージはあのインパクトのある共通の世界観を表しています。マスカラのセルフ市場は、イミュのデジャヴュ ファイバ−ウィッグという不動の人気商品があり、また、もとよりメイベリンが強く、更にマックスファクター資生堂など制度品メーカーも攻勢をかけています。その競合ひしめく市場で上位にくい込んでいるヒロインメイク、強力な情緒的要素で既存の人気商品との差別化に成功した好例と言えます。

※06年10月 日経POS情報 マスカラカテゴリーの販売個数ランキングではヒロインメイクのロング&カールマスカラは、イミュ、メイベリン、マックスファクター、マジョリカ マジョルカの商品群に続いて8位にランクされています。


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